第160章

知奈スタジオでは、佐藤玲奈が作業場に座り込み、修復用の筆を手に古画の修復作業に没頭していた。彼女の背後のテーブルでは、スマホの画面が突然明るく光り、何度も振動していたが、彼女にはそれに構う余裕がなかった。

どれくらいの時間が経ったのだろう、古画の修復作業が一段落し、佐藤玲奈は肩の凝りをほぐしながら、コーヒーを淹れて一息つこうとしていた。

「玲奈姉ちゃん」

ノックが三回した後、茅野青がオフィスのドアをそっと開け、顔を覗かせた。

「ん?」

「堀田おばあさんが来られたよ」

コーヒーをかき混ぜていた佐藤玲奈の手が一瞬止まり、慌てて言った。

「すぐに通して!いや、私が行くわ」

佐藤玲奈...

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