第162章

時間は一時間前に戻る。

田中麻衣は本来、堀田知也に何かするつもりはなかった。

彼女はただ書類を提出する機会に堀田知也を一目見たいだけだった。あるいは一言でも話せれば良かった。今日はまだ堀田社長と言葉を交わしていなかったのだから!

しかし、オフィスに入ると、中には誰もいなかった。

おかしいな、今日は堀田社長が出かけるのを見なかったはずなのに。

田中麻衣が不思議に思っていると、内室から微かな物音が聞こえてきた。好奇心に駆られた彼女は、そっと内室のドアを開けて中を覗き込んだ。

すると、いつもとは少し違う堀田社長の姿が目に入った。

体調が悪いせいで、堀田知也の顔は紅潮し、大量の汗で純白...

ログインして続きを読む