第172章

雅苑のオーナーは佐藤玲奈が想像していた本の虫ではなく、両腕に筋肉が盛り上がった逞しい男性だった。

佐藤玲奈はオーナーと対面した瞬間、心の中で感心せずにはいられなかった。やはり人は見た目で判断できない。一見ごつい男が、こんなに雅やかな内面を持っているなんて。

オーナーと簡単に言葉を交わした後、彼女は白崎雪乃を連れて静かな個室へと向かった。

道中、白崎雪乃は何か心配事があるようで、いつになく黙り込んでいた。

テーブルに料理が全て揃うと、佐藤玲奈はようやく小声で尋ねた。

「一体何があったの?」

「私は…」白崎雪乃は顔を上げて佐藤玲奈を見つめた。唇を少し動かしたが、何か言いにくいことがあ...

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