第182章

「玲奈!」

佐藤玲奈はキーボードを打っていた両手が微かに震えた。彼女は顔色一つ変えずに顔を上げ、オフィスの入口を見やった。

やはり、数日逃げ回っていたが、結局佐藤大樹に見つかってしまったか。

数日会わなかっただけなのに、佐藤大樹は見るからに憔悴していた。頬はこけ、目の下にはクマができ、顎には無精ひげが生えていた。研究所の白衣を着ていなければ、どこかのホームレスかと思うところだった。

佐藤玲奈は無言で佐藤大樹をしばらく見つめた後、ため息をつき、彼をオフィスに招き入れた。

「兄さん、どうしてそんな姿になっちゃったの?」

佐藤玲奈は佐藤大樹に水を一杯注ぎ、何とも言えない表情で彼を見つめ...

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