第186章

白崎雪乃は辛さのために仰いでいた手を一瞬止めた。彼女は潤んだ瞳を上げて向かいに座る男性を見つめ、一時言葉を忘れてしまった。

佐藤大樹もまた、静かに彼女を見つめていた。

二人はしばらくの間見つめ合い、やがて佐藤大樹が小さく笑って尋ねた。

「飲まないの?」

その優しい低い声に、白崎雪乃はびくりと震え、慌てて茶を手に取ると、覚悟を決めたかのような勢いで一気に飲み干した。

佐藤大樹は白崎雪乃が自分の注いだ茶を飲み干すのを見て、先ほどまで曇っていた眉目が柔らかくなった。

この一杯の茶を経て、二人の間の気まずい雰囲気は幾分か和らぎ、ぽつりぽつりと世間話を交わすようになった。

「雪乃、今は病...

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