第346章

木村直人は古川夫婦を無視し、部屋の扉を力任せに押し開けようとした。中からは女の悲鳴と泣き叫ぶ声が漏れ聞こえてくる。

佐藤玲奈は眉をひそめ、周囲を見回した。騒ぎが大きすぎたせいか、このフロアで休んでいた客たちが野次馬となって集まってきている。

これ以上は時間をかけられない!

「木村さん、少し下がって」

佐藤玲奈は冷ややかな声で告げた。

木村直人は一瞬呆気に取られ、ドアノブを握りしめていた手の力を緩めると、無意識に数歩後ずさった。

「あんた誰だ? 何をする気だ!」

古川梨斗は佐藤玲奈のただならぬ気配に嫌な予感を覚え、慌てて前に出て止めようとしたが、木村直人に立ち塞がられた。

「妙...

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