第356章

「彼は帰ってこないわ」

佐藤玲奈は気にする風でもなく肩をすくめると、立ち上がってベッドへ向かい、シーツを整えながら淡々と言った。

「もう何日か前から、寝室を別にしているの」

「えっ、どうして? ずっと仲が良くて、うまくいってたじゃない!」

霧雨縁は焦ったように駆け寄り、佐藤玲奈の手をぎゅっと掴んで問い詰めた。

「もしかして、彼も玲奈を騙してたの? 浮気されたの?」

佐藤玲奈は困惑の表情を浮かべた。

「……え?」

彼女が振り返って真剣な眼差しを向けると、霧雨縁はその意味ありげな視線にハッとして、慌てて手を離した。

まったく、佐藤玲奈の目の前でなんてでたらめを口走ってしまったの...

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