第370章

それは奇妙な造形をした小さな置物だった。玉座に旋回するように翼を広げた黒竜があしらわれ、エメラルドのような両目が妖しい光を放ちながら佐藤玲奈をじっと見つめている。

佐藤玲奈は胸の奥に悪寒を覚えた。鋭い視線を向け、無意識のうちに立ち上がると、その置物へと歩み寄った。

「玲奈?」

服部老人と歓談していた高橋老人が佐藤玲奈の異変に気づき、慌てて声をかけた。

佐藤玲奈は答えない。まるで何も聞こえていないかのように、ただひたすらその置物へと向かっていく。

ただならぬ様子に、高橋老人は急いで立ち上がり、佐藤玲奈の正面に立ってその表情をそっと窺った。

服部老人もまた、突如として張り詰めた空気に...

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