第372章

「堀田社長、転院の手続きが完了しました」

 木村直人が歩み寄り、堀田知也に小声で尋ねた。

「大奥様にお知らせしなくてよろしいのですか?」

 佐藤玲奈を知る者なら誰もが知っていることだが、堀田の祖母はこの孫嫁をそれはもう溺愛していた。もし彼女の身に何かあったと知れば、どれほど悲しむか計り知れない。

 堀田知也の表情がわずかに強張り、やがて淡々と言い放った。

「今は伏せておけ」

「はい」

 その後は、慌ただしい転院作業が続いた。

 ようやく佐藤玲奈はZ市の中心病院へ無事に移送された。堀田知也は自らの人脈を駆使し、市内の高名な専門医をこぞってこの病院に呼び寄せ、彼女を診察させた。し...

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