第378章

「私……近くのホテルへ連れてって」

霧雨縁はうつむいたまま、膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめていた。

八代倫也は何も言わず、ただ静かにルームミラー越しに後部座席の女を見つめている。

やがて、八代倫也はエンジンを吹かせ、車を急発進させた。

十五分後、車は高級マンションの地下駐車場へと滑り込んだ。

霧雨縁にとって、ここは見知らぬ場所ではない。都心にある八代倫也の独身用マンションだった。

霧雨縁は傍らのハンドバッグをきつく握りしめ、少し強張った声で尋ねた。

「どうして私をここへ? 嫌よ、私は……」

「行く当てがないんだろう」

八代倫也は霧雨縁の言葉を遮った。

「行く当てがな...

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