第410章

木村直人は病室のドアの前に立ち尽くしていた。室内でどこか寂寥感を漂わせている背中を見つめていると、どうしても中に足を踏み入れ、その静寂を破る気にはなれなかった。

だが……

先ほど受けた電話を思い出し、心の中で密かにため息をつくと、やはり足音を殺して部屋へと入っていった。

「堀田社長」

木村直人は堀田知也の背後に回って立ち止まり、声を潜めて告げた。

「先ほど小野寺さんからお電話がありました。熱が上がったり下がったりを繰り返しているそうで、社長に成田先生を連れて診に来てほしいとのことです」

「自分で救急車も呼べないのか」

堀田知也の冷え切った、感情の欠片もない声が唐突に響いた。

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