第423章

 堀田グループの社長室が黒を基調にした、無駄のない端正さを感じさせるのに対し、結城会長のオフィスは古雅な趣に満ちていた。机の上には年代も知れない小さな置き物が並び、壁には書画や飾り扇が掛けられている。どれもこれも、主の趣味の高さを物語っていた。

 佐藤玲奈は軽く室内を見回し、やがて視線を壁の飾り扇へと留めた。扇面の絵を、息を殺すようにじっと見つめる。

 入口でしばらく待っていた結城達真は、玲奈が扇ばかり見て黙っているのがもどかしくなり、ずかずかと中へ入った。

「さっきからそれ、見すぎだろ。何か問題でもあるのか?」

 玲奈が口を開きかけた、その背後から――鐘のように響く厳しい声が落ちた...

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