第43章

病室内、空気が張り詰めていた。

木村直人は様子がおかしいと気づき、急いで言い訳をして立ち去った。

木村直人が去った後、堀田知也は小さくため息をつき、佐藤玲奈を自分の腕の中に引き寄せた。

「忙しかった?」堀田知也の声が佐藤玲奈の頭上から低く響いた。

「うん」佐藤玲奈は心から安心できる腕の中で全身の力を抜き、小さく頷いた。

二人は長い間黙ったまま抱き合い、やがて離れた。

佐藤玲奈は既に眠りについている堀田おばあちゃんの方を向き、小さな声で尋ねた。

「おばあちゃんの調子はどう?」

「まあまあだよ。医者によると状態は安定してきたから、数日で退院できるらしい」堀田知也は声を潜め、佐藤玲...

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