第430章

「わ、私……頭が、すごくくらくらする……」

小野寺綾乃は立ち上がって二歩ほど進んだところで、ふっと足元が抜けた。体が斜めに崩れ、そのまま倒れ込む。

「綾乃、大丈夫?」

ぱちり、と瞬きをすると、霞む視界の向こうに遠坂紫の心配そうな目があった。

「奥様……私は、大丈夫です。救急車を……呼んでいただけますか……」

「心配しないで。堀田家にはプライベートドクターがいるの。すぐ診せるわ」

遠坂紫の声が、どこか遠くなる。次の瞬間、誰かの腕が自分を支え、前へと促した。

足取りはふわふわと頼りない。周囲の建物がぐるりと回り、綾乃自身は宙に浮いたまま――やがて、柔らかな雲に落ちるみたいに沈んでい...

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