第431章

人生でいちばん絶望して、心が折れかけたその瞬間――小野寺綾乃の脳裏に浮かんだのは、結城達真だった。

堀田知也の次に、自分にいちばん優しくしてくれた男。好きだと言い、待つと言いながら、最後には別の女と婚約し、平然と背を向けた男。

綾乃は床に落ちたスマホをみっともなく拾い上げ、震える指で結城達真の番号を押した。

そのころ結城達真は、雪城夢子との激しい情事を終えたばかりだった。夢子は風呂へ行き、達真はベッドに腰を下ろして、煙草を一本また一本と吸っている。

不意に着信音が鳴った。画面に浮かぶのは、忘れたくても忘れられない名前。

達真はわずかに眉をひそめ、閉ざされた浴室の扉へ目をやった。中か...

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