第450章

電話の向こうから、高橋亜里沙の泣き叫ぶ声が響いた。

堀田知也は意外に思った。彼の知る高橋亜里沙は、自尊心がやたら高くて傲慢で、人に下に見られるのを何より嫌う女だ。いま受話器の向こうで、怯えながら泣き言を並べる声は――とても同一人物とは思えない。

堀田知也は黙ったまま、壁の時計をちらりと見上げた。正午きっかり。あの女はちゃんと飯を食ったのか。まだスタジオで残業しているのか。――俺のこと、少しでも考えたか。

ふっと、目の奥が陰る。平らだった感情が、たった一人の女のせいでわずかに揺れた。

「……用はそれだけか。なきゃ切るぞ」

冷淡に、泣き声を遮る。胸の中で気にかかっているのは、別の女だっ...

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