第505章

「眠れなくなっちゃった」

佐藤玲奈はまっすぐに台所へ行き、自分で水を一杯注いだ。コップを手にしたまま窓辺へ腰を下ろし、冷たい月光をその身に浴びる。

堀田知也が目を上げ、しばらく玲奈を見たあと、淡々と言った。

「悪い夢でも見たのか」

佐藤玲奈は答えない。窓の外の細い新月を見上げ、コップの水を一口ずつ飲み干していく。

空になったところで、ようやくゆっくり口を開いた。

「……ずっと昔のこと、夢に見たの」

遠すぎる前世。遠すぎる過去。遠すぎる悪夢。

転生してから長い時間が経ち、玲奈は前世のあれこれをほとんど忘れかけていた。あの悪夢はもう自分から遠ざかり、二度と影を落とすことはないと思...

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