第512章

病院の薄暗い廊下。長椅に座り込む木村直人は、見るからに打ちひしがれていた。袖口も手も、点々と赤黒い血に染まっている。恐ろしいほど生々しく、それでいてひどくみすぼらしい。

佐藤玲奈が駆けつけたとき、目に飛び込んできたのはまさにその光景だった。

辺りを見回す。手術室の前で待機しているボディガード数名と木村直人以外に、堀田知也の姿はない。

玲奈の胸がひゅっと縮む。嫌な予感が背筋をなぞり、歩幅を早めて木村の前へ向かった。

「木村さん、あの……あの人は、どこに?」

震えそうになる声を必死に押し殺し、玲奈は静かに訊く。

木村は顔を上げ、玲奈を見た。唇を一直線に結んだまま、歪んだ笑みを浮かべる...

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