第525章

「堀田社長、俺が――」

木村直人が手を上げ、ノックしようとしたその瞬間。扉がすっと開き、佐藤玲奈が眉をわずかに上げた。ドアの外、スーツケースを提げて立つ木村さんを見下ろす。

「若奥様、このたびは……お時間を頂いてしまい、申し訳ありません。会社のほうで少々……」

木村直人はどこか後ろめたそうに鼻先を触り、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

本当は、来たくなかった。

堀田おばあさんからは、国外で社長と若奥様が関係を深める時間を邪魔するなと、きつく言い含められている。だが堀田社長が会社を空けた途端、取締役会の年寄りどもが黙っていない。社長不在に乗じて、好き勝手に動こうとしている。

自分は...

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