第526章

ホテルの一室で、木村直人はパソコンの前に座り、カタカタとキーボードを叩いていた。ときおり視線だけをそっと上げ、向かいにいる上の空の男をうかがう。

堀田知也はソファに深く腰を下ろし、脚を組んでいる。片手で顎を支え、もう片手ではスマホの画面を指先で流すようになぞっていた。眉間にうっすらと皺が寄り、苛立ちが滲む。

奥様が出て行って、まだ一時間ちょっと。たったそれだけでこの不機嫌さだ。堀田社長に、こんなふうに人恋しくなる一面があるなんて、今まで知らなかった。

「堀田社長。こちら、資料の整理が終わりました。ご確認ください」

木村直人はそう言いながらエンターキーを押し、まとめたファイルを堀田知也...

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