第527章

佐藤玲奈は部屋に戻るなり、スーツケースを広げて荷物をまとめ始めた。のろのろと一時間かけてようやく詰め終え、ドアを開けた瞬間――陰った顔の男に行く手を塞がれる。

「どこへ行く」

堀田知也が沈んだ声で問う。雲を溜めたような視線が彼女の手元、スーツケースへと滑り、瞳の奥がいっそう暗く沈んだ。

「別の部屋を取ります。……あなたの邪魔にならないように」

淡々と言い、佐藤玲奈は堀田知也を押しのけて出ようとする。

次の瞬間。

バンッ――と凄まじい音。堀田知也が大股で室内に踏み込み、勢いよくドアを叩きつけた。逃げ道を断つように、彼女を壁へ追い詰める。息が詰まるほどの圧が、肌にまとわりついた。

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