第528章

「……本当なんでしょうね」

高橋亜里沙は冷えた表情のまま通話を切った。伏せたまつげの影で目元を落とし、左手の中指にはめた指輪を、指先でそっとなぞる。

古銅色の指輪だ。輪には長い年月が刻んだ擦り傷が走り、そこへ不気味な艶を宿した赤い瑪瑙がひと粒、はめ込まれている。

亜里沙が堀田知也を追ってF国へ来る前、彼女はまず遠坂紫に会いに行き、取引を結んだ。

「私が堀田知也を手に入れる手助けをしてあげる。その代わり、高橋家の力で堀田家を手に入れさせて」

あのとき、欲に濁った目をした女はそう言った。

堀田聖の愛人風情が、亜里沙を踏み台にして堀田家を奪うつもり? どこからそんな度胸が湧くのか、亜里...

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