第530章

同じフロアの客室で、蝶野諭介は熱のこもった額を押さえ、ソファに座って休んでいた。実際、そこまで重い症状ではない。少し土地に体が合わない程度で、医者にも診てもらい薬も飲んだ。ひと休みすれば治るはずだった。

それなのに――ホテルの正面玄関で、堀田知也と高橋亜里沙が一緒にいる場面を思い出すたび、どうにも自分を抑えられない。気づけばスマホを手に取り、佐藤玲奈へ電話をかけていた。

コンコンコン――

扉の外から、一定のリズムでノックの音が響く。蝶野諭介の胸が「どくん、どくん」と跳ねた。まるで恋を知ったばかりの少年みたいに。

蝶野諭介は深く息を吸い、ソファから立ち上がって扉を開ける。

「玲奈、君...

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