第537章

結城達真は足を止め、振り返って小野寺綾乃の真っ赤に腫れた目を見た。結局、心が折れる。

「もう、こんなことはするなよ」結城達真は小さく息を吐いた。

「うん、しない」小野寺綾乃は近寄り、甘えるように彼の腕に絡みついて歩き出す。

「でも結城兄さん、兄さんも約束して。これから先、雪城夢子のこと――見ないで。ね?」小野寺綾乃はつないだ手をふりふり揺らし、ねだるように言った。

「……うん」結城達真は上の空で返事をする。

その気のない横顔を見た瞬間、小野寺綾乃の胸が「どくん」と沈んだ。

最近、結城達真は自分にどんどん冷たくなっている。少し前までなら、仕事が忙しくて苛立っていて、彼女の機嫌まで構...

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