第552章

「玲奈、俺……午後の便でZ市に戻る」

「えっ?」

佐藤玲奈は一瞬、言葉を失った。ぱちぱちと瞬きをして、困惑したまま堀田知也を見上げる。

堀田知也はゆっくりと彼女の前まで歩み寄り、腰に腕を回した。そのまま、少し腫れた赤い唇を塞ぐように、深く口づける。

唇が離れると、堀田知也は玲奈の濡れて柔らかな唇を指でなぞり、淡々と言った。

「会社で急ぎの案件が出た。俺が戻って処理する」

「じゃあ、行ってきて。私ひとりでも大丈夫」

玲奈は理解を示した。そもそも知也が何日も休めるなんて最初から思っていなかった。旅行に出てまだ一日。もう仕事に呼び戻される。

――仕事が恋敵みたい。しかも、絶対に勝て...

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