第582章

「高橋家の婚約パーティーなんて、ただの茶番だよ」白崎雪乃はお菓子をつまみながら、やけに真面目な顔で言い切った。

滅多にない休日。霧雨縁と白崎雪乃は佐藤玲奈のマンションに転がり込み、だらだらと世間話をしていた。

あの夜――「婚約披露」と称された一件の後、高橋家はすっかり市民の格好の噂話になっている。

霧雨縁がテレビを眺めていると、背後で足音がした。振り返ると、キッチンから果物の盛り合わせを持って出てきた佐藤玲奈がいる。

縁は眉をひそめた。

「玲奈、あの日のあと……どうなったの?」

あの日のあと?

佐藤玲奈はテーブルに果物皿を置き、ふっと動きを止めた。脳裏に蘇るのは、あの部屋へ踏み...

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