第583章

佐藤玲奈は、茜谷未来の「好き」という言葉をまるで気に留めていなかった。というより、あれは友達としての好意なのだと当然のように受け止めていて、それ以上の意味に結びつける発想自体がなかったのだ。

その頃、高橋亜里沙はまだぶつぶつと喚き続けていた。

「どこまで厚かましいの! 堀田知也にだって捨てられたくせに、まだ放してあげないっていうの!」

玲奈の表情がすっと硬くなる。冷えた視線が、床に散らばったペンダントの破片へ落ちた。ひび割れた瞬間に、あの不気味な気配も赤い光もとっくに消えている。禍々しい呪物も、砕けてしまえばただのガラクタ――のはずだった。

それでも玲奈は油断しない。ハンカチを取り出...

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