第59章

「青」佐藤玲奈は病室のドアをノックして、中に入った。

病室には茅野青一人だけがいて、彼女はベッドに座り、少し虚ろな表情で遠くの壁をぼんやりと見つめていた。

佐藤玲奈の呼びかけを聞いて、彼女はゆっくりと顔を向けた。

佐藤玲奈はその澄んだ純粋な瞳を見て、胸が痛んだ。

やはりだめなのか?

彼女はまだこんなに若いのに、両手がこのまま使えなくなってしまうのか?

佐藤玲奈は目を伏せ、冷たい視線で茅野青の白く傷一つない手首を見た。包帯を巻いていた形跡すら残っておらず、このように見ると何も問題がないように見える。

でも……

「青、あなたの手は……」佐藤玲奈は慎重に尋ねた。

茅野青はまばたき...

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