第60章

佐藤家のことについて、茅野青が知っていることはそれほど多くなかった。

佐藤玲奈が話したがらない様子を見て、それ以上は聞かないことにした。

二人がスタジオに戻ると、奇妙な老人が入り口の辺りをうろついているのが見えた。

その老人は背筋がぴんと伸び、松の木よりも硬く直立していた。白髪交じりの頭だったが、歩く姿は風のように軽やかで、今どきの若者よりも元気そうだった。

さらに、佐藤玲奈は老人が身に着けている国際的な高級ブランドの限定コートを見て、この人物が裕福か身分の高い人物であることを察した。

しかし、誰なのだろう?

佐藤玲奈と茅野青は顔を見合わせ、すぐに老人に近づいていった。

「どな...

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