第64章

「盗まれたのか?」佐藤玲奈の表情が少し曇った。

佐藤大樹はため息をつき、淡々と言った。

「その男は周防神田という、私の同僚だ。話が上手くて人付き合いが抜群にいい奴で、私とは正反対だ。友達のようなもので、一緒にプロジェクトを研究したこともある。彼がこんなことをするとは信じられなかったが、事実は...」

一瞬言葉を切り、佐藤大樹は口元を引きつらせ、苦笑いを浮かべた。

「たぶん俺が天真爛漫すぎたんだろうな。他の人に相談したし、上司にも話したけど、誰一人俺の言うことを信じてくれなかった。前に6000万円借りたのを覚えてる?あの時は、その金でプライベート探偵を雇って、周防神田が俺の論文を盗用し...

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