第71章

佐藤玲奈は一瞬固まった。急いで駆け寄り、ドアを開けた。

黄色く淀んだ街灯の下に、背の高い長身の男が立っていた。その男は、自分の身分に似つかわしくない弁当箱を手に提げており、全体的に少し滑稽で不気味な印象を与えていた。

「どうしてここに?」佐藤玲奈は淡々と尋ねた。

「おばあちゃんが食べ物を届けてくれって」堀田知也はゆっくりと口を開いた。

「そう」

佐藤玲奈は黙ったまま身を横に寄せ、相手を中に通した。

堀田知也がスタジオに入ると、一目で作業台の上に片付けきれていない古画が目に入った。

やっぱり彼女は本当に残業していたんだ、俺を避けていたわけじゃないんだ。

そう思うと、堀田知也は明...

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