第90章

「奥さんの居場所を知っていると思います」

天川隆也の言葉は、まさに平地に落ちた雷のようだった。堀田知也は眉をしかめたが、何も言わなかった。

電話の向こうで、天川隆也は彼の反応など気にせず、一方的に話し続けた。

「三日前にZ市に着いたんです。私がここに来た目的は、堀田社長もご存知でしょう。私は郊外のリゾートホテルに滞在しているんですが、ちょうど二日前の夜に、ある男が人を担いで向かいの住宅に入っていくのを見かけたんです。その男は知らない人でしたが、担がれていた人は、どうやら奥様に似ていたように思えたんです」

これは思わぬ朗報だった。

しかし……

堀田知也は慎重に尋ねた。

「天川社長...

ログインして続きを読む