第91章

「ほり、ほりた社長」茅野青は冷ややかな顔の男を見つめながら、呟いた。

堀田知也は茅野青に一瞥を送り、淡々と言った。

「先に出ていてくれ」

「はい、分かりました」

茅野青は振り返り、ベッドに横たわったままやや呆然としている佐藤玲奈を心配そうに見つめてから、黙って部屋を出ていった。

病室は瞬く間に言いようのない静寂に包まれた。

佐藤玲奈は目の前の男性を困惑した様子で見つめた。端正な容姿に圧倒的な存在感を持つ彼だが、どこか懐かしい親しみを感じさせ、心の奥底から思わず近づきたい、慕わずにはいられない感覚があった。

佐藤玲奈は自分が記憶喪失になったわけではないことを知っていた。

彼女は...

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