第5章

沙良視点

バーでの情熱的な一夜の余韻に浸る間もなく、さらに大きな危機が早々と訪れた。

桜井石油の会議室は、息が詰まるような空気に満ちていた。

誰もがテーブルに広げられた環境報告書に視線を集中させている。

「この調査結果は捏造だ!」父が拳を叩きつけた。「我々の掘削事業は、あらゆる環境基準を満たしている!」

だが、テレビのニュースはこう報じていた。『桜井石油が北原の地下水を深刻に汚染した疑い。環境団体は即時操業停止を要求……』

いわゆる「証拠」とやらを見つめながら、前世の記憶が洪水のように蘇る。これは全て朗の策略だ! でも、前の時間軸では、この危機が訪れるのは半年後の筈。私...

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