第5章 危険な試み

真夜中、十二時きっかり。

枕元のスマートフォンが、けたたましい電子音で鳴り響いた。

浅い眠りから荒々しく引きずり出された私は、画面に灯るその名前に、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。

——神崎凛太郎。

「こんな夜分にすまない」

受話器の向こうから、彼の静かな声が鼓膜を揺らす。

「君と話しておきたい、大事なことがあるんだ。少しだけ、出てきてもらえないだろうか?」

大事なこと? この時間に?

いかに重要なビジネス案件であろうと、深夜に婚約者を呼び出すなど常軌を逸している。彼の行動は、もはや異常の域に達していた。

「……何が、そんなに急ぎなのですか?」

「電...

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