第7章 甘い時間

箱根から東京へ戻った翌日、私の日常は、その色彩をがらりと変えた。

表向き、私と神崎凛太郎は誰もが羨む婚約者同士でありながら、ビジネスの場では節度ある距離を保つ完璧なパートナー。

けれど水面下では、私たちは本当の恋を育んでいた。

まるで薄氷を踏むような、甘く危うい日々に、私の心臓は四六時中、幸せな音を立てていた。

「今日から、ここが俺たちの秘密基地だ」

凛太郎に連れられて桐生グループ本社の屋上へ上がると、そこは彼の手によって巧みに改装された、隠れ家のような空中庭園が広がっていた。青々とした蔦が無骨なフェンスに絡みつき、壁面には季節の花々が植え込まれ、外界の喧騒から完全に隔絶...

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