第9章 最後の戦い

深夜の神崎家、その私的な書斎。

私と神崎凛太郎は、重厚なマホガニーの机を挟んで向き合っていた。目の前には春原花音の行動記録、彼女をシンデレラと持て囃すメディアの扇情的な記事、そして桐生グループの最新財務データが、まるで戦場の地図のように乱雑に広げられている。

「これ以上、受け身でいるわけにはいかないわ」

私は苛立ち紛れに、赤ペンで春原花音の写真にぐりぐりと丸をつけた。

「彼女はもう、世論の風向きを完全に掌握している。このままじゃ……」

「完膚なきまでに叩きのめされるだろうな」

凛太郎は静かに頷き、指先でテーブルをと、と、と規則正しく叩いた。

「だが、春原花音の最大の武器...

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