第14章「よくもそんなことができるな」

ドリアン視点

セラフィナの車のヘッドライトが霧の中へと消えていくのを、俺は見送った。肌に残る彼女の甘い花の香りは、いつもなら俺を落ち着かせてくれるはずなのに、今はその効果もなかった。

彼女は俺たちの運命の相手だ。俺たちの呪いを理解してくれる、唯一の存在。そう自分に言い聞かせた。

『ならば、なぜ我々は虚しいのだ?』と、俺の内の狼が問いかけてきた。

こめかみを揉むと、いつもの圧迫感がこみ上げてくるのを感じた。今日はエクリプス・カースの発作は起きていないが、それが潜んでいる気配はあった。去り際にセラフィナが薬を持ってきてくれた。症状が出たら必ず飲むようにと、心配そうな目で俺に約束させたのだ。...

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