第157章思いやりのある人

ライラ視点

私は息を呑み、勢いよく振り返った。

身構えていたような恐ろしい化け物ではなく、そこにいたのは、着古した使用人の服を着た、腰の曲がった老人だった。彼は箒を手に、私と同じくらい驚いた顔をしていた。

「お嬢さん、こんなところをうろついてはいけませんな」

ただの管理人よ。私の狼が安堵のため息をついた。

「ごめんなさい」私は言った。「散歩をしていたら、方向がわからなくなってしまって。戻る道が見つからなかったの」

「ここは立ち入り禁止ですよ、お嬢さん。誰も言いませんでしたか? ここは旧館だ。誰も来てはいけないことになっているんです」

「立ち入り禁止? どうして?」

彼は誰も聞い...

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