第34話ピック・ミー・アップ

ライラ視点

「どうして私が、長老会へのご挨拶に同行する必要があるの?」

夕暮れの光が差し込むキッチンで、ドリアンはカウンターに寄りかかっていた。その長身が落とす影の中で、彼の琥珀色の瞳は感情を読み取らせない。

「長老が病気なんだ」と、彼は平坦な声で告げた。

その言葉に、氷水を背筋に垂らされたかのように、はっと気づいた。薬のこと、そして妙に心配してくれたこと、そのすべてが腑に落ちた。

私を懐柔するつもりだ。要求を突きつける前に、従順にさせようとしている。

「だから薬を持ってきたのね。頼み事をする前に、地ならしってわけ?」

彼の顔に一瞬驚きがよぎったが、すぐに無関心の仮面へと戻った。...

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