第十章 あなたにはまだ姉がいる

神崎蒼は後頭部をさすりながら振り返った。そこに立っていたのは、髪に白いものの混じる、険しい顔つきの中年男――。

「……親父?」

神崎蒼はぱっと表情を変え、さっきまでの硬さをどこへやら、にへらと笑ってすり寄った。

父の名は神崎重之。蒼海医科大学名誉学長、セントラル総合病院の前院長。いまや国内医学界の泰斗で、咳払いひとつで業界の空気が変わる人物だ。

「臭いガキ、偉くなったもんだな」

神崎重之は息子を睨みつけると、顎で示した。

「リサさんがここにいるのに、なんで早く俺に知らせない」

「知らせたかったですよ! でも親父の携帯、電源切れてたし……それに、こっちもバタバタで。リサだって急に...

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