第百四章 もちろん君が恋しかったからだ

鳳咲夜は、入口に立つにこやかな男を見て、思わず困ったように笑った。呆れと可笑しさが、いっぺんに込み上げてくる。

「……どうして来たの?」

「もちろん、会いたくなったから」

宝生尊はそう言うと、手を伸ばして鳳咲夜のこめかみのあたり――乱れて落ちた髪をそっと耳の後ろへ流してやる。

小林秘書は「まあまあ」とでも言いたげな、いわゆる“姨母笑い”を浮かべたまま、空気を読むように静かに退出した。しかも、気遣いまで完璧に、扉をそっと閉めていく。

鳳咲夜は、その甘い言い方に妙に居たたまれなくなり、視線を落とした。

「いつからそんな、くさい台詞言うようになったの」

「自分の彼女に言うんだ。何がく...

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