第106章 それなら婚約破棄だ

「な、なによ……あんた、私を侮辱する気!? しかも鳳咲夜と比べるなんて……!」

鳳咲夜――その名は、須藤梨々花にとって耳を切り裂く刃みたいに刺さる。聞いただけで、身体が条件反射みたいに強張った。

「……私の前で、その名前を出すの!?」

須藤梨々花は江崎拓海の鼻先を指さし、甲高く叫んだ。

鳳咲夜……また、鳳咲夜!

江崎拓海が、鳳咲夜が鳳家の令嬢だと知った日から、男は露骨に変わった。梨々花のことなどどうでもいい顔をし、ことあるごとに鳳咲夜の近況を探るようになったのだ。

鳳咲夜の動きは固く守られていて、拓海が掴める情報はほとんどない。それでも、ほんの僅かな手掛かりでも見つければ、必死に...

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