第百十章 兄さん、お願いがあるんだ

鳳一輝は眉間に皺を刻み、たまらず口を挟んだ。

「でもそれじゃ……鳳美桜は、逆に自分から正体を晒してることにならないか? 余計に――あいつが腹黒くて、裏があるって証明してるようなもんだろ」

鳳咲夜はローテーブルの清茶を手に取り、ほんのひと口だけ含んでから、落ち着いた調子で問い返す。

「お兄さま。あなたの中でずっと“狡猾で底が見えない人”だった相手が、ある日いきなり白紙みたいに単純で、言動の全部が“被害者”とか“無実の人”のテンプレにぴたりと収まったら……逆に変だと思わない?」

鳳一輝は顎に手を当て、考え込んだ。

……確かに、それはそうだ。

たとえば、悪事の限りを尽くしてきた人間が、...

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