第百五十五章 彼を迎えに行けない

妙だ。

まず引っかかったのは、投薬記録だった。

カルテの処方欄に並んでいるのは、鎮静・入眠を促すものや、神経の栄養をうたう類の、いわゆる一般的な薬。用量も、どれも基準の範囲内に収まっている。

ところが看護記録には、ときおり曖昧な一文が紛れ込んでいた。

「夜間に興奮・不穏あり。白色錠剤1錠を臨時投与。その後、入眠」

「情緒不安定で言動に混乱あり。医師指示にて青色カプセル1カプセル投与。30分後、軽快」

……なのに、医師の指示書には、その“臨時投与”に該当する薬剤名がどこにもない。

しかも、その臨時投与の頻度が――ここ1年で、明らかに増えている。

次に、覚醒時間の記述。

初期の...

ログインして続きを読む