第156章 私の屍を踏み越えない限り

鳳咲夜の手が、ぴたりと止まった。

その声に、全員が振り向く。

見ると、白衣を羽織った男が、同じく寝不足じみた目をしながら廊下の向こうから慌ただしく駆けてくるところだった。

男はそのまま駆け寄ると、鳳咲夜と鳳達司のあいだに割って入る。

「待ってください! サインしちゃ駄目です! 鳳さん、今は鳳達司さんを退院させられません! 危険すぎます!」

鳳咲夜は目を上げ、突然現れたその医師をひややかに見据えた。

さっき目を通したカルテの、主治医欄に載っていた写真――たしか、この男だったはずだ。

名前は……五月優和。

「五月先生?」

鳳咲夜はわずかに首を傾げた。

「何か問題でも? 私は彼...

ログインして続きを読む