第百六十七章 彼は熱を出した

彼はぐっすり眠っていた。疲れているだけにも見える。けれど、よく見れば呼吸がいつもより少し速い。

  鳳咲夜の胸が、どくんと重く沈んだ。

  ――この様子、おかしい。

  彼女はすぐにスマホをさらに近づけ、食い入るように画面を見つめた。

  今度ははっきり見えた。宝生尊の頬に、不自然な赤みが差している。

  熱……?

  そう思った瞬間、鳳咲夜はじっとしていられなくなった。

  宝生家の本邸にいるのは、宝生尊と宝生奈々枝だけ。昨夜、二人が一晩戻らなかったことは、宝生奈々枝だって当然知っているはずだ。

  おそらく今ごろは、尊は自室で眠っているものと思い込んでいる。しばらくは異変...

ログインして続きを読む