第百八十章 エステートで大事件が起きた

鳳美桜は跳ね起きると、転げるようにして物音のしたほうへ駆けだした。

音は、別荘一階の脇から聞こえてきたものだ。

鳳美桜は曲がり角の壁に身を寄せ、息を殺してそっと覗き込む。

廊下には使用人が二人。顔を真っ赤にして、互いの肩を押し合いながら言い争っていた。

片方の若い女中は、小さなケーキ箱をぎゅっと握りしめている。中のケーキはクリームが潰れて、見る影もない。

「これ、私が先に取ったの! 今日キッチンで作ったティラミス、たったこれだけなんだから!」

若い女中が甲高い声を張り上げた。

「先に取ったから何? 田中さんが、午後のお茶菓子は私の分もあるって言ったのよ! あんた、こそこそ先にキ...

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