第189章 なるほど彼だったのか

蒼海市で「鄭」なんて姓はそう多くない。しかも力のある家となると――思い当たるのは、たった一つ。

咲夜ははっとして華香を見た。

「医薬品を扱ってる……井添家のこと?」

華香がゆっくり頷く。

「はい。井添家です。現当主は井添幸哉」

井添幸哉――。

鳳咲夜の頭の中で、ぶん、と音がした。

井添家は確かに医薬で成り上がった一族だ。ここ数年は事業を大きくしているが、名が通っているのはあくまで医薬の領域だけ。底力も産業の幅も、鳳家とは比べものにならない。

それに普段は両家の取引も薄く、互いに干渉しない関係だった。だから調査のときも、咲夜の視線は井添家にほとんど留まらなかった。

だが今、点...

ログインして続きを読む