第211章 あなたのためだけに

宝生尊は、彼女のすぐ傍ら――いつの間にか片膝をついていた。

見上げる視線の先に鳳咲夜を捉えたまま、手にはベルベットのジュエリーケース。

蓋の内側で、鳩の卵みたいに大きなダイヤの指輪が、街のネオンと遠くの花火を受けてきらきらと輝いていた。

鳳咲夜の頭が、一瞬まっ白になる。呼吸さえ止まった。

宝生尊は彼女を見上げ、頬をうっすら赤くして言う。

「咲夜。……前に病室でやったやつ、あれは……雑すぎた。正式でもなかった。指輪もない、準備もない、まともに『結婚してくれますか』の一言すらない。あれは、違う」

指輪を掲げた手は、ぶれずに空中で止まっている。

視線も、逸らさない。まるで彼女だけを世...

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